簾は、室内のしきりや日よけなどに古くから使用されてきました。
平安時代の中期、清少納言によって書かれた『枕草子』の中にも記載が見られ、宮廷生活の中に簾が溶け込んでいたことがわかります。また、重要文化財に指定されている鎌倉時代の簾が神奈川県の寺院に保存されています。
簾は古来から伊予簾が有名ですが、京都のものが最上級のものが最上級とされ「禁裏翠簾師」といった高級品専門の職人もいました。江戸においても、徳川家康の江戸開府以来、江戸の繁栄につれて、江戸城、武家屋敷、神社仏閣、あるいは商家などで簾が使われるようになりました。
江戸時代元禄期に発行された『人倫訓蒙図彙』には、江戸の町に御簾師(屋)がいたことも記されていて、当時すでに簾専門の職人がいたことがわかります。 簾は将軍、大名・旗本、宮中などの高貴な身分のものばかりでなく、庶民の間にも広がって、日よけ・目隠し用に多く用いられるようになりました。浮世絵の中にも簾がしばしば登場しています。
明治以降も、簾は、家庭や神社仏閣などにおいて使用されてきました。明治5年(1872年)発行の『東京府志料』には、東京府内各地で簾が生産されていた状況が記されています。
近年、安価に大量製造したもの、中国などからの輸入品の供給が増え、手づくりの簾を作る職人が数少なくなりました。江戸時代にはぐくまれた「江戸簾(すだれ)」の伝統の技法は今も受け継がれ、生活の中に風流の心をもたらす粋なインテリア用品として見直されるなど、新たな発展への契機が芽生えつつあると感じています。私たちは江戸時代から300年あまりにわたり継承されてきた技術を基礎に、現代の生活様式に合致したデザインと優れた品質の製品をつくりだす努力を続けています。
昭和58年に東京都知事指定の「東京都伝統工芸品」に指定されています。